本部会では,単一の個体あるいは物体がそれ自体で持っている能力をはるかに超える能力や特性を群れ(スワーム)を形成することにより発現する現象,またはそれらの構成法や解析法を含み,群れ(スワーム)関連のシステム分野を担当する.動物行動学あるいは進化生態学などの生物学分野では,群れは個体が緊密に集まった状態で何らかの個体間相互関係が成立している集まりと解釈されている.しかし,その群れの行動は予測困難な場合がほとんどである.例えば,ムクドリの群れがねぐらへ帰るときに見せる群れ行動,社会性昆虫のアリに観測される役割分担や利他的行動など,いまだに学説の域にある.しかし,近年,大量のデータ解析に基づく行動数理モデルが構築されつつあり,大きなブレイクスルーが期待される.本部会では,これら現代的生物学知見が適用できる自律分散システム設計論の構築を目指し,スワームシステム分野の開墾を担当する.
スワームシステムのような草創期にある学際領域においては,それに興味をもつ研究者はさまざまな分野に分散しており,互いの連携が取りづらいことが足かせになっている.そこで,これらの研究者が一堂に会して互いのビジョンについて自由闊達に語り,最新の研究成果や内外の動向などの情報交換ができる場の必要性を感じ,2011年にスワームロボティクス調査研究会を発足させた.これまで3年間の活動を通し,本領域の潜在能力の高さや学際的な広がりを認識できた.引き続き,この全貌が未知である新学術領域の基盤を確立させ,さらに持続的に発展させるためには,部会を設置して活発な活動を継続していくことが必要である.本部会では,主に定例研究会の開催およびオーガナイズドセッション等の企画により,この領域の基盤づくりを行う.定例研究会では,研究成果や進捗の報告,専門家を招いての勉強会,研究相談やオープン問題に関する討論,公開セミナー等を行う.定例研究会のうち一回は,より深い討論が可能なように合宿形式とする.
In 1993, I published the book entitled “Biologically Inspired Robots Snake-Like Locomotors and Manipulators-” from Oxford University Press. It was my secret pleasure to know that the term “Biologically Inspired Robots” has become very popular since this time in Robotic community, but at the same time it was a little bit disappointing for me to know that very few of them were really used in real applications. In this talk, I will show my early study about the biological experiments using real snake and study of snake-like locomotors and manipulators, including world first snake-like locomotor ACM 3. At the same time, I will also explain that the biologically inspired snake-like robots were just recently really used in real applications, such as the 4 m long coupled-tendon snake-like manipulator CT-Arm used for the inspection of high radiation site of Fukushima Daiichi nuclear reactor accident, and multi-wheeled snake-like locomotor ACM R4 for the same purpose and to look in the burrow of Wombat.
Previously, most models for swarming behavior have assumed the explicit alignment rule, by which an agent matches its velocity with that of its neighbors in a certain neighborhood, to reproduce a collective order pattern by simple interactions. Inter-individual network in a resultant swarm then tends to be stable in time. However, recent empirical research on real animal groups shows that (1) though individuals in a group can appear to be highly polarized and directed when looking at an instant in time, such network is dynamically changed in fish school and bird flock in the long term even though individuals in a group can appear to be highly polarized and directed when looking at an instant in time, and that (2) social force map analysis in two and three individuals fish group suggests that there is no evidence of direct matching of velocity and that global polarization results from interactions other than those that follow the explicit alignment rule. In this presentation, we first show that our model based not on explicit alignment rule but instead on mutual anticipation of motion among individuals realize densely collective motion with high polarity. Moreover, we show our model can reproduce empirical findings of (1) and (2).
Recently, significant gains have been made in our understanding of multi-robot systems, and such systems have been deployed in domains as diverse as precision agriculture, flexible manufacturing, environmental monitoring, search-and-rescue operations, and even swarming robotic toys. What has enabled these developments is a combination of technological advances in performance, price, and scale of the platforms themselves, and a new understanding of how the robots should be organized algorithmically. In this paper, we focus on the latter of these advances, with particular emphasis on decentralized control and coordination strategies as they pertain to multi-robot systems. The paper dis- cusses a class of problems related to the assembly of preferable geometric shapes in a decentralized manner through the formulation of descent-based algorithms defined with respect to team-level performance costs.
最適化問題の新たなパラダイムである粒子群最適化法(PSO)は,多峰性の大域的最適化問題に対して精度の高い解を導き出していることは知られている.しかし,高次元空間では,早い段階で局所解に落ち込む特徴がPSOにあり,その能力が発揮されない傾向がみられる.そこで,本講演では,高次元空間において早い段階で局所解に落ち込まず,より質の良い解を探索可能とするPSO の新パラダイムを検討したい.そこでは,PSOの能力を向上させるため,広く探索を行わせる戦略(多様化),かつ良い解の周りを集中的に探索する戦略(集中化)を強化した粒子エージェントを作り上げる.かつ粒子群がもつ情報を意図的に更新することにより過去の情報に束縛されず広い探索を実現可能とし優位な解に到達させる.また,広範囲なパラメータ値,その様々な組合せによりアルゴリズムの振る舞い,得られるコストの変化などを詳細に調べ,本アルゴリズムの特性を改めて再考したい.
群知能(swarm intelligence)は,鳥の群れに見られるように,個体間の局所的な相互作用を通じて,集団として高度な知性的な行動が現れる創発現象を指し,その具現化に関する計算手法に関する研究が長年されてきている.特に,集団全体を統御するリーダはなく,個体全員が平等な立場で相互作用する中,全体の知性が生まれるボトムアップな方法に研究者は,長年虜になってきた.また,群知能をさまざまな問題に応用する研究も活発である.その中で,障害物回避など,がいかにして再構築されるのかなどの自律的な制御問題,群れ行動を目的地へ誘導するなどの外から制御に関する研究なども着目されている.
本発表では,群れの自律的制御,また目的地へ誘導するなどの群れ制御には,個体間のネットワークの制御が鍵を握ることについて議論する.また群れ行動の制御から得られた知見の複雑系の制御への応用などについて議論する.
集団制の動物が集合的意思決定で,複数の選択肢から最も良いものを選ぶ合理的な意思決定(Collective rationality)をするためには,個体が選択肢の質に応じた反応をすることが必要だと考えられてきた.例えばミツバチでは,分巣の際に,質の良い巣場所の候補を発見したスカウト個体は,仲間を動員するための8の字ダンスを激しく,長く踊り,多くの巣仲間をその候補に動員するが,質の良くない候補に行ったスカウトは踊らなかったり,踊っても激しく長くは踊らないので,少数の個体しか動員されない(quality-graded responses).このため,質の良い候補により多くの個体が動員され,動員数がある定数(quorum)を超えると,集団全体がそこへ移動するという,多数決に基づく合理的意思決定を行う.アリでも同様の行動が知られており,集合性動物の合理的集団的意思決定には,quality-gradedな反応が必須だと考えられてきた.
今回の発表では,スカウト個体の間に候補の質に応じて反応する閾値にバラツキがあれば,スカウトがquality-gradedな反応が出来ない場合でも,集団は合理的意思決定が可能であることを理論的に示す.また,シワクシケアリを用いて,ワーカー間に反応閾値の変異が存在し,それだけにより彼らのコロニーが2つの候補からより良い候補を多数決によって選べることを実験的に示す.
ミツバチやアリで見られるquality-gradedな動員行動は,我々の提唱する機構と背反ではなく,我々の提唱する機構の確率的に起こる間違いや,quality-gradedな動員行動自体の確率的な誤りを正すための補完的な役割を担っていると考えられる.また,我々の提唱するメカニズムは,候補の質を判断して行動を変えるという複雑な処理を必要としないので,反応閾値に依存したyes/no型のステップ反応しか出来ない脳の神経細胞やスワームロボットを用いた集合的意思決定に,合理性を保証する聞こうとして働く(働いている)だろう.
進化生物学では,90年代に入り進化と発生の統合を目指す考え方(evo-devo)が盛んになり,さらに近年,生態−進化−発生(eco-evo-devo)の三者の統合も開始されている.仮想生物の進化に基づく人工生命研究は,Simsの先駆的研究を超えて,どのようにして進化生物学に貢献し,あるいは工学的応用に結びつけるのか,並列に進めている3つの研究を紹介することによってその可能性を示す.
生き物は,身体に有する膨大な自由度を巧みに操りながら,予測不能的に変動する実世界環境にうまく適応している.このからくりが理解できれば,生物学的にはもちろんのこと,ロボット工学的にも大いに資することが期待できる.しかしながら,生物制御のからくりを抽出(数理モデリング)する過程では,さまざまな恣意性が入る可能性が否めない.その結果,当該現象をうまく説明できうる「スッキリと本質を掴んだ」数理モデルを構築することは困難を極めるのが普通である.本講義では特に,四脚動物の脚間協調現象に内在する自律分散制御のからくりの抽出に関するわれわれの事例研究を採り上げる.正直に言いましょう.この事例研究は,モデリングがたまたまうまくいき,われわれ自身も当初は想像できなかったようなラッキーな結果がぞろぞろと出つつある研究である.それゆえに,この事例研究の成果からは学ぶべきことがたくさん詰まっていると思うので,そこから生き物が示す「コト」のモデリングの際のツボと注意点(罠)を,後付け説明をしながらみなさんと一緒に議論したいと思う.
自然選択による進化の古典的な考え方で,進化の方向性や速度は自然選択によって制限されていると見なされてきた.また,行動生態学の分野では,最適な行動が進化するという作業仮説をもとに研究がなされている.しかし,生物進化の機構には,適応進化を制限する様々な要因が存在する.また,進化しやすい生物や性質がある一方で,進化が制限されている生物や性質がある.さらに,そのような進化可能性や制約を創り出す要因の一つは遺伝的変異の維持・創出機構にある.遺伝的変異量に影響する要因として,生物の移動分散,遺伝子と表現型の関係,遺伝的基盤(ゲノム構造や遺伝子制御ネットワーク構造など)が重要である.本講演では,適応進化を妨げる要因,あるいは促進する要因とその重要性について議論する予定である.また,同時に生物個体の適応と集団の適応との関係についても議論したい.
石黒先生 | 河田先生 |
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群れの最も簡単なモデルは、レイノルズのBOIDS モデルである。それは3つのルール(反発・向きを揃える・集まる)と内部状態を持たないエージェントからなる。この3つのルールの進化的起源はなんであろうか。今回は、内部状態をニューラルネットで作った個体集団を用い、群れ生成への進化を議論する。
企画:システム制御情報学会 計測自動制御学会システムインテグレーション部門スワームシステム部会 科研費基盤研究(A)「生物の群れの行動生物学的理解に基づいた集合的知性の構成と人工物の群れ創成」
計測制御学会学会誌・計測と制御2013年3月号にて,「スワーム:群れの創発的挙動生成」が発刊されました.【SICEサイト内の紹介・目次】
松野文俊,大倉和博
- 【総論】スワーム:群れの創発的挙動生成,大倉 和博
- 【解説】社会性昆虫における分業システムのモデリング,土畑 重人・辻 和希
- 【解説】競争・同調・社会的促進,松島 俊也・Chentao WEN・小倉 有紀子・綱田 英敏
- 【解説】ミナミコメツキガニ放浪集団の維持機構の解明へ向けた基礎実験,森山 徹・中原 純・隈江 俊也
- 【解説】アリの集団採餌における方位情報の選択と切り替え,萩原 悠佑・秋野 順治・西森 拓
- 【解説】鳥の群れの動態解析と数理モデル,早川 美徳
- 【招待論文】Parallel Formation of Differently Groups in a Robotic Swarm, Carlo Pinciroli・Rehan O'Grady・Mauro Birattari・Marco Dorigo
- 【解説】アリの行動シミュレータ構築と生態の理解,松野 文俊・花本 惣平
- 【解説】群れ形成の動力学,成瀬 継太郎
- 【解説】スワームロボティクスのための進化型人工神経回路網,松村 嘉之・大倉 和博
- 【解説】人工生物の群れ行動のモデリングとその行動獲得,古川 正志・岩館 健司・鈴木 育男・山本 雅人・渡辺 美知子
- 【解説】場を改変することでコミュニケーションするロボット群,藤澤 隆介・土畑 重人・菅原 研
- 【解説】スワームロボティクスの実践的課題,久保 正男
- 【解説】マルチエージェントシステムにおけるダイナミクスと合意協調制御,滑川 徹
- 【解説】大規模構造物組み立てにおける複数移動ロボットの主従関係交換によるデッドロック回避,高玉 圭樹・大谷 雅之
私たちは刻一刻と変化する環境の中で,状況に応じた行動をとることができる.他者が存在する社会環境では,個体間の相互作用は脳にどのように働き適応的な行動発現にかかわるのだろうか?ほとんどの動物で普遍的に見られる攻撃行動を題材として,社会的な適応行動の発現メカニズムの解明に迫る.
闘争行動は,餌・縄張り・交尾相手などを争い,時に激しい攻撃を伴う.また,闘争はどちらか一方が引き下がると終結し,個体間に優劣関係が構築される.昆虫では,種内や異種間の攻撃を伴う闘争行動を容易に再現で,脳機能と行動を関連づけて議論しやすい.研究会では,アリやコオロギなどの昆虫の攻撃行動を題材として,昆虫の個体間相互作用が脳内生体アミンの働きを調節することで,個体の内部状態を実時間で変化させ,適応的な行動の動機付けや発現にかかわることを紹介する.また,生物実験をもとに提案したシステムモデルと計算機シミュレーションの結果,個体間相互作用と脳神経系に内在する多重フィードバック構造が適応的な行動の発現に重要であることを議論する.
いかなる生物も取り巻く環境の中で生活を営んでおり,程度の差こそあれ環境は変動する.生物には,環境に応答して形質を変化させる「表現型可塑性」が備わっており,可塑性そのものも進化する形質として後世に受け継がれている.我々の研究グループでは,一部の昆虫類が示す環境依存的な表現型改変機構である「表現型多型」について,社会性昆虫やアブラムシ,ミジンコなどを研究対象として研究を進めてきた.本講演では,それらの例をもとに,昆虫類がどのように環境を察知して表現型の変更を行っているのか,またそういった表現型可塑性がどう生物進化に影響を与えるのかについて,研究例を紹介すると共に議論を深めていきたい.具体的には,環境センシングから,生理機構(神経機構や内分泌機構)を経て発生機構(あるいは行動発現機構)に伝達されていくのかについて解説し,応答の異なる集団間などでの差違にまつわる研究例を紹介しながら進化的な考察をしていきたい.
青沼先生 | 三浦先生 |
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本講では,「動くモノ」に対して抽象的に感じることがある「知能」をできるだけ具体的に理解するための接地点を求めることを考える.そのために「知能を感じる条件」を考察し,それをもとに「知能の始原」を特定することを試みる.その結果,知能の始原はそのモノの身体と場の相互作用に存在するという考え方が導かれる.そしてその作用を数理的に理解するには制御学の考え方を導入することが妥当であるという考えを示す.最後に,この考え方に則っていると見える事例をいくつか紹介する.
女王とワーカーがコロニーを作って暮らすアリはとても働き者であると思われています。しかし、巣の中を観察してみると、ある瞬間には7割ほどのワーカーは何もしておらず、長時間観察しても、1〜2割のワーカーはほとんど労働と見なせる行動を取りません。アリは案外働き者ではないのです。ここで、働かないハタラキアリがいつも存在するようなシステムは、全員がいつも働いているシステムよりも必ず、短期的な生産性が低くなります。コロニーの生産性を高めるように自然選択が働いているはずのアリで、なぜ一部がいつも働かなくなるようなことが進化しているのでしょうか。本講演ではこの問題を、科学の両輪であるHow(どのような機構で起こっているのか)とWhy(なぜそんな機構が存在するのか)の疑問から解明します。その課程で、システムの進化を考えるとき、従来の進化理論で軽視されていた、存続性の確保という観点の進化的重要性を明らかにしたいと考えています。
徳島文理大・伊藤悦朗先生に「ミツバチ8の字ダンスのエラーによる効果」,京都大・松浦健二先生に「シロアリ社会における繁殖の組織化と労働の自己組織化」という題目でキーノート講演をしていただきました.
Swarm intelligence is the discipline that deals with natural and artificial systems composed of many individuals that coordinate using decentralized control and self-organization. In particular, it focuses on the collective behaviors that result from the local interactions of the individuals with each other and with their environment. In the talk I will overview some interesting social insect behaviors and then describe some computer science and engineering applications that took inspiration from these behaviors. In particular, I will discuss the food foraging behavior of ants and how it inspired a methodology for the approximate solution of difficult discrete optimization problems and the self-assembly and cooperative transport observed in some ant species and the corresponding behaviors implemented in swarms of robots.
演者らはアリの社会をシステムとして捉え,その世代を超えた時間スケールで生じるダイナミクス(進化)と世代内で生じるダイナミクス(社会生理学)という2つの力学系について話題を提供する.近年,進化生態学ではハチ目の社会を支える不妊ワーカーの利他行動は,ワーカーが互いに利己的に振る舞うのを監視・抑制(ワーカーポリシング)することで成立しているのではと議論されている.Ohtsuki & Tsuji (2009)は動的ゲームモデルによりワーカーポリシングが進化する一般的条件を提示した.このモデルにより従来統一的な説明が困難だった女王単婚下でのワーカーポリシングの存在を説明する一方で,若い小さなコロニーでは強いポリシングが起こり成熟したコロニーでは弱まるとの新しい予測を導いた.トゲオオハリアリではこのコロニーサイズ依存の予測を強く支持する実験データが得られている.しかし,アリはコロニーサイズの変化をいかに知り行動を変えるのか.アリがコロニーサイズを「知っている」ことはアリ学者には周知の事実だが,その具体的仕組みはほとんど未解明である.そこでこの系を用いアリがコロニーサイズに依存し行動を切り替える至近メカニズムを自己組織化と自律分散という観点から解明を試みた.本研究では進化と社会生理学という2つの力学系の相互作用を議論する.
動物は,なぜ群れるのか?この問題に対して,行動生態学は非常に見通しの良い定量的フレームを提供してきた.採餌経済にシナジー効果があると,個体の戦術はproducers(生産者)とscroungers(掠奪者)に分かれて均衡する.この中で個体が自己の収益を最大化すると,その行為は個体の最適化から見掛け上の逸脱を示す.今回はヒヨコ(ニワトリのヒナ)を用いた実験室内の行動の解析をしめしながら,資源競合下における衝動性と同調の制御機構を探る試みを紹介する.
亜熱帯地方の干潟に生息するミナミコメツキガニは,数千から成る放浪集団を形成する.この集団中に小型移動体を投入すると,カニと人工物から成る新たな集団が生まれるだろうか.実験の特徴は,実験者が,小型移動体に搭載される無線カメラから送られる映像だけを頼りに移動体を遠隔操作する点である.講演では,これまでの実験で得られた放浪集団の特徴と,移動体投入実験の計画を紹介する.
制御理論,通信理論,計算科学の進展が,我々の身の回りの動的システムを多機能化,高機能化させ,その結果益々対象システムは大規模複雑化している.大規模複雑系には,ネットワーク構造が内在し,複数の動的エージェントがこのネットワークを介して相互作用し合う.このようなシステムはマルチエージェントシステムと呼ばれ,その応用は,ビークルフォーメーション,協調ロボット制御,センサネットワーク,スマートグリッドなど多岐に渡る.一方で複雑系・力学系やシステム生物学の解析ツールとしても研究が進んでいる.近年,システム制御理論の分野においてマルチエージェントシステムに関する研究が活発に行なわれており,本稿では特にマルチエージェントシステムにおけるダイナミクスと合意協調制御則,その制御理論的な性質を解説する.また応用展開に関して,国内外の研究の趨勢をご紹介する.
辻先生 | 松島先生 |
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森山先生 | 滑川先生 |
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神戸大・郡司ペギオ幸夫先生に「相互予期が形成する群れの構造」という題目でキーノート講演をしていただきました.
単一ロボットでは問題解決が困難なタスクに対して,構造が比較的簡単で安価に構築可能な自律ロボットを多数用いて解決策を提示しようとする分野が急速に注目を浴びるようになってきている.現在,この分野はスワームロボティクスと呼ばれており,群知能を物理的に具現化されたシステムに適用する手法に関する研究分野であると認識されるようになっている.この新学術領域の必須の条件として,大域的情報を収集して各ロボットに指示を出すようなスーパーエージェントが存在しないことがあげられる.結果として,スワームの群れ行動は各ロボットの局所的相互作用から必ず創発的に生成される.この枠組みのもと,有意義な群れ行動の生成方式の一つとして,アリのような社会性昆虫の生態を模倣した制御方式が有効であると考えられている.本調査研究会では,これらの具体的設計論や各タスクへの適用方法を探り,スワームロボットシステムの設計方法論について調査・検討することを目的とする.調査研究会の継続により,これまでの成果発表,および研究領域の啓蒙により一層注力する.
まず,スワームロボティクス分野の重要性とその高い潜在能力を本学会構成員に対し広く啓蒙しながら我が国におけるスワームロボティクス研究を統括し,最新の研究動向を共有する.それとともに様々なアイデアを調査・検討していきながら,スワームロボティクスを現在の萌芽段階から確固とした一つの方法論として確立できるように,研究会や講演会の開催などを行い,全体的研究レベルの向上のための環境基盤の整備を行う.
これまでスワームロボットシステムで取り扱われて来た代表的タスクは,(1)集合,(2)拡散,(3)餌拾い,(4)パターン形成,(5)連結された集団での群れ行動,(6) 協調搬送などがある.それぞれ異なる困難性を持つため,それぞれに異なるアプローチの設計方針が取られることが多かった.本調査研究会では,これらのタスク群に対し広範囲に適用可能な方法論に関して検討を行う.特に,社会性昆虫の生態に動機付けられた制御方式に重点を置き,その有効性について検討する場を提供する.また,ロボットプラットフォームの設計・開発を行う.
広島大・西森拓先生に「アリの集団採餌における判断と行動」,東北大・早川美徳先生に「鳥の群れの集団動力学」という題目でキーノート講演をしていただきました.